エステ解剖生理学~神経系Ⅰ
エステティックに携わって45年、エステ伝道師 清水收一が伝える<本物のエステティックを知って欲しい>
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エステ解剖生理学~神経系Ⅰ
人間が生命活動を続ける為には、細胞や各組織、器官(臓器)が協調して働かなければなりません。それを司っているのが「神経系」であり、内分泌系と協力して、密接に各器官・組織を統制しています。
神経系の構造と役割
神経系は神経細胞の「ニューロン」と神経膠細胞「グリア細胞」から成っていて、外界からの刺激や内臓で起こった刺激を中枢に送り、そこで興奮作用を起こして、身体各部の筋や内臓、腺に伝達・命令をします。
神経細胞の構造
- 神経細胞(ニューロン)
核を持つ「神経細胞体」、興奮を受け止める「樹状突起」、そして、興奮を伝える「軸索」(長さ1mのも及ぶものがある)から成っています。
- 神経膠細胞(グリア細胞)
神経細胞以外の神経系を構成する細胞の総称。
神経細胞の位置を固定したり、栄養を補給して代謝に関わるなど補助的役割を担います。また、「シュワン細胞」により、絶縁性の髄鞘(ずいしょう)を形成し、神経パルスの伝達を高速にします。
情報の伝達~「興奮と抑制」
情報を受け取る[樹状突起]は、神経細胞の軸索の先端「シナプス小胞」から分
泌される神経伝達物質によってべつの神経細胞に伝達されます。
神経伝達物質には、神経を興奮させプラスに働くものと、抑制させマイナスに
働くものがあります。
興奮させる物質 ドーパミン :快感を増幅させ、攻撃性、陶酔感を与える。
アドレナリン :血糖値や心拍数を調整、ストレスに対応。
ノルアドレナリン:意欲、闘争、逃避、幸福感、不安感。
セロトニン :睡眠の生体リズムに関与「幸せホルモン」
抑制させる物質 ギャバ :脳全体の神経シグナルを抑制。
ノルアドレナリンやセロトニンが適量の場合は気分が良く、これらが過剰にな
ると「躁状態」になり、少なくなると気分が落ち込み「うつ状態」なる。
神経系の系統
神経系は脳及び脊髄からなる「中枢神経系」と、全身に網の目のように張り巡
らされた「末梢神経系」からなっています。
中枢神経系は、末梢から受けた情報を処理、統合する重要な役割を担っており
脳は「頭蓋腔」、脊髄は脊柱の「脊髄腔」にあります。
脳と体の各部位をつなぐ末梢神経は、骨格筋を支配する「体性神経」といい、
刺激を受け取ったり、身体を動かす情報をやり取りする神経で、「感覚神経」
と「運動神経」からなります。
意志の支配を受けない自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」に分かれて
います。
中枢神経系
中枢神経は各部からの刺激を受け取って、これに対処する指令を末梢に送り出
す、いわば司令塔の働きをします。
脳の構造と役割
脳は頭蓋骨腔の中にあり、大脳・間脳・脳幹(中脳・橋・延髄)・小脳からなり
ます。
重さ約1300gの器官で、頭蓋骨と3層の髄膜(外側より、硬膜・クモ膜・軟膜)
に包まれています。
脳は、軟膜とクモ膜の中の血管と脳脊髄液で満たされ、浮いている状態で外部
の衝撃から保護されています。
大脳
脳の約80%を占め、間脳と中脳を背面から覆っています。
大脳の表層「大脳皮質」は約140億個の神経線維が集まって、脊髄との連絡を
担っています。
情報の伝達路は錐体が交差しているため、知覚や運動感覚の中枢は、左右反
対の脳に存在しています。
また、高等動物では大脳が爆発的に発達していて、働きは部位によって分業し
ています。
「大脳皮質」は脳溝によって前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉に分かれていま
す。
- 前頭葉:大脳皮質の約40%を占め、身体を動かすための運動野があり、下方には言葉(会話)を発音するための運動性言語野(ブローカ野)もあります。
- 頭頂葉:皮膚や粘膜の知覚(触覚・圧覚・痛覚・温覚・冷覚)を司る体性感覚野があります。
また、感覚性言語野(ウエルニッケ野)と、下方には味覚中枢もあります。
- 後頭葉:視覚野と、文字を見てその意味を理解する視覚性言語野が有ります。
- 側頭葉:聴覚の中枢で、聞いた言葉を理解する感覚性言語野が有ります。また、内部には臭覚野があり、記憶と感情を司る部位と考えられています。
- 連合野:大脳の様々な領野と情報を交換して統合し、高度でより複雑な神経機能や精神活動をさせている、「知り分ける」役割を担っています。
前頭葉の連合野は倫理的な思考や意思決定を担い、前頭前野は大脳皮質を統括しています。
脳の階層
大脳皮質は発生学的に古い脳「大脳辺縁系」と、新しい脳「大脳新皮質」で構
成されています。
- 大脳辺縁系:人間の五感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)に関する情報が通
過し、本能や情動による喜怒哀楽、原始的な記憶、内臓の動きなどを調整し
ます。(アロマセラピーの理論背景は、ここから来ています)
『ヒトの脳は、直立二足歩行によって手を使えるようになり、手から受ける
刺激が大脳を発達させ、やがて言語を獲得したことで、さらに大脳が進化し
たといわれています。』
間脳
間脳は大脳辺縁系に囲まれていて、視床と視床下部などからなっています。
視床(味覚以外のすべての感覚を大脳皮質に伝える)
視床下部(自律神経や内分泌系の中枢が集まる重要な部分で、体温調整や水分代謝、本能<食欲、性欲など>、情動に関わっていま)
脳幹
- 中脳(姿勢のバランスを保ち、眼球の動きや瞳孔の大きさを調節)
- 橋 (三叉神経、顔面神経、聴神経などの脳神経に関わり、咀嚼筋を支配し、唾液の分泌にも関与)
- 延髄(脊髄の延長上にあり、呼吸運動、循環などに関わっています。唾液の分泌や嚥下運動、嘔吐などの反射中枢も有ります)
小脳
脳全体の約10%程度で、運動系の統合を担い、身体の平衡感覚や微妙な動きをスムーズにします。
脊髄
身体広域に及ぶ末梢からの情報は、脊髄神経を介して脊髄・脳に伝えられます。
脊髄の前側に運動神経細胞、後ろ側に知覚神経細胞が集まっています。
脊髄反射(情報処理の短縮形)
末梢神経系、自律神経、脳の三位一体説は、エステ解剖生理学~神経系Ⅱで解
説いたします。
まとめ
人間が生命活動を続ける為には、細胞や各組織、器官(臓器)が協調して働かなければなりません。それを司っているのが「神経系」であり、内分泌系と協力して、密接に各器官・組織を統制しています。
その構造と役割、また指令システムを詳しく解説いたします。
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1982年、エステティックサロンのプロデュースとコンサルティング、商品の提供などを主な業務とするエステティック総合商社・株式会社サンクを設立。
『素晴らしくしようじゃないか、エステティック!』を合言葉に、エステティックの正しい理論や新しい技術の普及に努めると共に、オーナーのヴィジョン『夢』とサロンの魅力が詰まったオンリーワンサロン作りを目指し、エステサロンの企画から経営までトータルでサポートしています。
主な著書:最新レジャー産業開発・経営モデルプラン、女性向け・新レジャー事業(綜合ユニコム)、SOINESTHE、ESTHE NET(新美容出版)
ビューティーソムリエールエステティック理論編(サンク)
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